2009年2月15日日曜日

清泉 純米吟醸 酒母仕込み 16BY


清泉 純米吟醸 酒母仕込み 16BY
久須美酒造株式会社

新潟県三島郡
原料米/
精米歩合/
アルコール度数/14-15度
日本酒度/-22
酸度/6.5

■ラベルに刻まれた災害の記憶
今回ご紹介する「清泉 純米吟醸 酒母仕込み」は、一見普通の地酒ラベルが貼られた酒のように見えますが、実はあるエピソードが込められている酒なのです。
このお酒を醸す久須美酒造さんはTVドラマにもなった『夏子の酒』のモデルとなった蔵としても知られています。
一般的な日本酒は酒母に麹・水・蒸し米を加え、モロミを仕込んで醗酵させる造りを行います。
これを基に山廃だの1段仕込みだの、色々な設計を加えて様々な日本酒が出来上がる訳ですが、この「酒母仕込み」はその名の通り、酒母のみを継続醗酵した16BYだけに発売されたお酒なです。
この酒が誕生するきっかけとなったのは、新潟中越大震災によるもの。
新潟中越大震災発生当時、久須美酒造さんでも既に酒造りが始まっており、酒母を5本仕込んでいたそうです。
そこに地震がきて、その後の酒造りが不可能になってしまいましたそうで、この酒母をどうするかと考え、そのまま発酵させてお酒にしてみようということになり、この年のみ発売されたのが今回のお酒というわけです。

当時のニュースでも有名蔵の被災から復興までを大きく取り上げたりしていましたが、実際には復興が間に合わず、廃業に追い込まれたお蔵さんもいくつかあり、自然と共に在る酒蔵であっても、牙をむいた自然の力には贖う事ができないのだなぁ、と感じた記憶があります。
今現在でも、全国の多くの酒蔵では老朽化が目立っており、大きな災害に対する危機が懸念されるお蔵さんが少なくありません。
「酒母仕込み」のような機転で造りを無駄にしないのは、久須美酒造さん並の販路があったればこそなんですよね。

■呑んでみました
スペックにあるように日本酒度が-22と、端麗辛口なイメージの久須美酒造さんの酒とは思えない酒母仕込み。
麹米のみで醸した酒という事で、南部美人の「オール麹 生」をイメージしていたのですが、グラスに注がれた色、甘い果実香は確かにオール麹に通じる部分があります。
ただ酒母仕込みの方が全体的に爽やかな印象がありましたので、元々の蔵の酒質を反映しているのか、濾過の過程が異なる部分が酒にも現れているのかもしれませんね。

味もかなり酸味と甘味がありますが、いわゆる非日本酒風味の地酒に比べると、サラサラとした口当たりが特徴的。
そうは言っても一般的な清泉とはだいぶ異なる印象ですから、当時は小さめのリキュールグラスで呑んでいた記憶があります。
個人的には洋食に合うと思いますが、一般的な評価だと生牡蠣に合うと評価されるのかも。
二度と手に入らない、と言うよりも在る意味出荷されないで欲しい背景を持つお酒ではありますが、酒蔵の歴史を記憶に刻む意味では呑んでおいて正解だった1本なのでしょうね。

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